③窓サッシ 購入前のポイント
住宅の開口部に設置される窓・サッシ。元々は採光や通風、眺望のために取り付けられて来ましたが、近年は断熱、遮音などの機能が大きくクローズアップされています。今後は複層ガラスや内窓など、断熱効果のある窓・サッシが当たり前になっていくと思われます。多種多様な製品が発売されていますが、それぞれの長所をつかんでお住いの地域に適合した快適な住まいづくりに活かしてください。
窓の断熱性能は、サッシの素材に大きく左右されます。これまで日本ではアルミ製サッシがポピュラーでしたが、熱伝導の小さい樹脂サッシの採用も増えてきました。
また、断熱を目的として、2枚のガラスの間に中空層を設けた「複層ガラス」の使用も多くなってきました。この複層ガラスには、ガラスの内側に特殊な金属膜を入れ、断熱や遮熱効果をアップされた「エコガラス」も含まれます。また複層ガラスの中には、中間層に特別なガスを封入してより断熱効果をあげたものもあります。窓の内側に新たにもう1枚サッシを付け加えることによって断熱機能をあげる「内窓」という手段も広く使われています。
窓・サッシは開口部である以上、防犯についても配慮が必要となります。複層ガラスに特殊な膜を挟み込むことでガラス破りを防ぎ、防犯性能を高めた製品も登場しています。
家全体の窓を断熱効果の高い樹脂サッシとエコガラスに変えれば、大きな冷暖房費の削減が期待できます。しかし要所要所に性能の高いサッシ、ガラスを使用していくことで、低コストで快適な住まいづくりをすることも可能です。
- 1.サッシの素材別分類
- 2.種類による断熱性能の差
- 3.防犯に役立つガラス、サッシ
- 4.デザイン性の高いサッシ
- 5.サッシの材質と特徴、断熱性能
- 6.複層ガラス、エコガラスの種類、特徴
- 7.内窓のしくみと適した設置場所
1.サッシの素材分類
断熱性能はアルミ<樹脂 近年の人気は複合タイプ
サッシとは、ガラスをはめこんだ戸と枠が一体となったもの。ガラス板を固定する枠板のことを「かまち」、壁に固定する部分を「枠」というが、一般的には枠も含めて全体をサッシと呼ぶことが多い。
サッシの材質は、大きく分けて「アルミ」「樹脂」、そしてアルミと樹脂の「複合」タイプの3タイプが 主流。国産初の住宅用アルミサッシの発売は1961年で、その後の高度成長期にアルミサッシ市場も急成長してきました。
1987年にはアルミ樹脂複合サッシが発売される(この時は寒冷地仕様とされていた)。さらに近年では、環境問題やバリアフリーを考慮した製品が続々と登場しています。
アルミは軽い上に腐食に強く、加工しやすいため、住宅環境や窓の形に合わせて対応しやすいのが大きな特徴です。アルミサッシは日本特有の「雨仕舞い(室内への雨水の浸入を防ぐ仕組み)」の必要性や、防火機能などが重視されて幅広く普及しました。
樹脂サッシは断熱性の高さが特徴。樹脂はアルミに比べて熱伝導率が1000分のーともいわれ、断熱性にきわめて優れています。アルミ鍋の取っ手が樹脂で作られていることを思い起こせば納得がいくでしょう。
アルミ樹脂複合タイプは、アルミの軽さと強度、樹脂の断熱性を併せ持ったサッシで、室内側は樹脂製、外側はアルミ製になっています。近年人気が高まってきており、現在、複合タイプのサッシのシエアは約3分の1近く(新築の場合)まで上がってきております。
2.種類による断熱性能の差
内窓、複合サッシも高い断熱性能
下のグラフは、サッシの種類による、室内の熱が窓から逃げる割合の差を示したものだ。
アルミサッシに単板ガラスを入れた場合に逃げる熱を100とした場合、アルミサッシに単板ガラスを2枚合わせた複層ガラス(ペアガラス)を入れた場合は70、アルミ+樹脂の複合サッシに複層ガラスを入れた場合は50近くと、熱の損失割合が大きく下がる。
さらに断熱効果を高めるには他に3つの方法があります。
- ①複層ガラスを使用した内窓の取り付け
- アルミサッシで単板ガラスの窓に、複層ガラスを入れた内窓を設置すると、室内から室外に逃げる熱の割合は35にまで下がる。
- ②アルミ+樹脂の複合サッシにLoW-E複層ガラス
- LoW-E複層ガラスとは、複層ガラスの内側のどちらかの面に特殊な金属膜をコーティングしたガラスのこと。複合サッシに、LoWlEガラスと単板ガラスの2枚を合わせたLoW-E複層ガラスを入れると、やはり窓から逃げる熱の割合は35まで下がる。
- ③樹脂サッシにLoW-E複層ガラス
- 樹脂製のサッシにLoW-E複層ガラスを入れると、やはり窓から失われる熱の割合は35まで下がる。予算や設置場所、求められる機能に合わせ、最適な製品を追及しましょう。
3.防犯に役立つガラス・サッシ
2大侵入原因「ガラス破り」と「無施錠」に対抗する
断熱とともに、窓に欠かせない機能が「防犯」です。ワンドア・ツーロックなど玄関の防犯が強力になってきたこともあり、窃盗犯は玄関より窓から侵入することが多くなりました。平成25年の警視庁統計によれば、空き巣の7割近くが窓からの侵入だという報告があります。
また、家族の睡眠中、食事中など在宅中に進入する窃盗犯が増えているという心配なデータもあります。
空き巣の侵入手段は、一戸建て住宅ではガラス破り、中・高層住宅では無施錠が多くなっています。割れにくいガラスと、セキュリティに配慮したサッシが多数登場しているので、顧客の安心・安全を守るためにぜひ採用したいです。また、内窓や面格子、シャッターなどの取り付けも併せて採用できればより安心・安全な生活に結びつきます。
4.デザイン性の高いサッシ
高い断熱性能と美しさの両立
眺望性を確保するため、サッシの枠を細くし、ガラス面積を最大限に大きくした製品が登場。断熱機能にも配慮されています。
5.サッシの材質と特徴、断熱性能
樹脂サッシ
熱伝導率が低く、結露しにくい樹脂サッシは塩ビを原料に作られます。以前は樹脂特有の外見が敬遠される傾向もありましたが、最近のサッシはデザインが多様に進化。日本の住宅に合うものも多く登場しています。
寒冷地では一般的になってきたが、全国での普及率は10.0%※1。既存住宅への普及は、まだこれからといえます。
アルミと樹脂の複合サッシ
アルミに樹脂を複合させたサッシの普及率は30.9%。室内側に断熱性の高い樹脂、室外側に強度に優れたアルミを配置。双方の利点を生かした設計で、樹脂サッシに抵抗のある顧客にも受け入れられてきました。
ただし、断熱性能は樹脂のみのサッシには及びません。
アルミサッシ
日本では1950年代から軽さと気密性・耐久性の高さが評価され、全国に広く普及。現在でも新築住宅でのアルミサッシ導入は6割近く、一般に「サッシといえばアルミ」の印象が根強いです。
アルミに異素材を組み合わせたサッシも登場しています。
6.複層ガラス、エコガラスの種類、特徴
ガラスの層で遮熱・断熱・日射をカット
サッシとともに考えなくてはならないのが、ガラスです。
1枚のガラス(単板ガラス)より2枚の複層ガラス、2枚より3枚のトリプルガラスと、順に断熱性が高まります。複層ガラスでは、問の層にあるのが空気かガスかによっても効果が異なります。
また、複層ガラスでは、エコガラスと呼ばれるLow-Eガラスも選択可能です。遮熱か断熱か、住まいのある地域や窓をっける場所によっても適確なものは異なります。
7.内窓のしくみと適した設置場所
短時間の施工で二重窓に 防音・防犯効果も
既存の窓枠を利用し、室内側にもう一つの窓をつけるのが内窓。内窓は樹脂枠が多い。外窓との問に生まれる空気層により、結露の軽減や断熱、遮音などの効果が期待できます。
一番の魅力は施工の手軽さです。窓枠を外す必要がなく、1窓あたり約1時間で取り付けが完了します。マンションでは外壁は共用部分にあたり、サッシの交換は簡単ではないが、内窓なら可能な場合も多いです。
サッシを二度開け閉めする手間は生じるが、防犯にも有用。防犯ガラスにすれば、さらに安全性は高まります。
まとめ
これまで見てきた通り、窓・サッシリフォームを実施することで断熱効果は大きくアップします。
光熱費削減の観点から見ても勧めがいのあるリフォームのひとつであります。
ただし、窓・サッシによる断熱リフォームをするときは、製品の断熱性能と並んで、日差しによる影響も大きいことに留意しましょう。
事前に十分に設置場所を調査をし、それぞれの窓に差し込む日差しの強さや角度を把握することが、適材適所で効率の高い窓・サッシリフォームにつながるでしょう。
※資料抜粋:株式会社リフォーム産業新聞社発行「リフォームセールスマガジン」より
知っておきたい"窓・サッシ"データ
世界の主流は樹脂サッシ
各国ではサッシにどの素材を取り入れているのか。グラフを見てみよう。
北欧と日本以外の国々では、樹脂サッシの普及が6割を超えている。省エネ基準の厳しい環境に配慮した国では、窓にも断熱基準が設けられている場合が多い。
規定の熱貫流率をクリアした窓でなければ、新築の家に使えないのだ。
日本では、アルミとアルミ樹脂複合サッシの率が他国より高いのが特徴的である。