日本古来の引き違い戸

日本の建築ではとても理にかなった無駄のない建具が使用されています。

近年では多くの住宅で洋式の内装や建具の使用が主になっていますが、日本古来の建築物をよく観察してみたり実際に使用することでその便利さに気づくことがあります。

建具ではクローゼットや下駄箱など、戸や扉が使用されているものが多くありますが、これらに注目し、数十年前の日本に置き換えてみると、クローゼットは押し入れという形をとっていました。

最近の洋式建具では折戸や扉で開閉して使用しますが、押し入れや下駄箱などではいずれも引き違い戸が使用されていました。

窓についてもそうです。窓の開閉にはドアのように半円を描いて開く形のサッシの使用が主流になっていますが、以前の日本では引き違い戸が使用されていました。

普段の生活の中では気づきにくいものですが、大掃除や模様替えのタイミングで現代的な建具に不便を感じたことがある方もいらっしゃるでしょう。

窓は引き違い戸であれば左右を入れ替えることができ、内側も外側も全面をまんべんなく拭くことができるのに対し、ドア状になっている窓では、開閉部分以外ははめ殺しになっていて外側を拭くことはできません。

開閉部分も外側はとてもお手入れしにくいため、二階以上の窓では屋外から高水圧洗浄機などを使用して洗浄することしかできないのです。

引き違い戸の良いところはこれだけではありません。２枚で一対になった戸はそれぞれ取り外すことができるのです。

部屋のドアやその横幅などには限界があり、大型の家具を搬入を諦めなくてはならないことがありますが、引き違い戸であれば戸を取り外してベッドやソファーなどの大型家具を楽に搬入できるのです。

リビングと和室などの個室を隔てる戸では不要なときは片側にすべての戸を戸袋に収納できるなどのメリットもあります。

空間を広げることでリビングをより広く見せることができますし、個室として使用したいときは戸を閉めるだけです。

生活時間によってやライフスタイルの変化に応じて、その時に合った間取りにするために壁をつくることも取り払うことも自在にできるのです。

引き違い戸と聞くと少し古臭い印象を持たれることもありますが、現代の建具でも新しい製品は作られています。

これから注文住宅を建築される方などにとっては、家の中の一か所だけでも採用してみてはいかがでしょうか。引っ越しや家具の搬入時、お手入れなどさまざまなメリットが得られるはずです。